2016年6月7日火曜日

6月5日(日)柴又100K

柴又100K、100キロ。

4月にかすみがうらマラソンを終えて1か月半、100キロに向けてフル以上の距離を走ってきた。4月30日(土)56キロ、5月5日(日)70キロ、5月8日(日)30キロ、5月14日(土)55キロ、5月21日(土)41キロ。それぞれ走ったときの感想・記録を残しておくべきだった、けどちょっと書く余裕がなくてほったらかしにしてしまった。まあ、これくらい走れば100キロも無茶な距離ではないのではないだろうか。そう思い、そう思い込んでいよいよ柴又100Kに挑む。目標は10時間切り、サブテン。ひと月前の70キロの平均ペースがキロ5分17秒だったからいけるんじゃないかな。

当日、4時前起き。うどんを1玉、6つ切り食パン1枚、カステラ1個を食べる。そして出発。6時前に柴又駅に到着。駅近くのコンビニに寄り、ようかんを3個買う。100円コンビニだからか、普通にコンビニで売っているようかんよりでかい。1個食べる。1個は50キロ地点で受け取るドロップバッグへ。もう1個は80キロ過ぎで受け取るスペシャルバッグに入れる。会場に到着、スタートはDブロックの7時だから余裕がある。ちなみに申告タイムは11時間22分33秒。まずトイレに並び、荷物を預けて、もう一度トイレに並び、スタート地点へ。ちょうどCブロックがスタートしたあとで、これもっと早いスタート時間だったら慌ただしかったなあ。
いよいよスタート。スタートして1キロくらい走ったらすぐに砂利道が始まる。ぎゃあ痛い痛い。履いているのはいつも通りVFFのSEEYA LS。まじで石が痛い。事前にコース図を見たらいくつか砂利道エリアがあったから、100キロ走る中、この痛みとも戦わないといかんのか。きついなあ。と、なんとか最初の砂利道を抜けて、早すぎず、遅すぎず、自分をペースを見つけるまで様子を見ながら走り、だいたいこれくらいかなって思いウォッチを見るとキロ5分前後。いやあちょっと 早いかなあ、と思ったけど、まあこれで行けるところまで行こう。ふと、俺と抜いたり抜かれたりしてるランナーがいることに気づく。これは俺と競っているのか、それともランナーあるあるなのか。あまり気にしないようにと思いながら、キロ4分55秒〜5分07秒くらいのまま走っていく。20キロで持っていたジェルを初めて投入。ここからは10キロごとに補給していこう。エイドで水もしっかりと取っていく。途中で小さいおにぎりなどを置いているエイドがあり、走る前は食べようと思っていたけど、いざとなると手が出ない。フルマラソンでもほとんどエイドに手を出したことがないからか。今思うとこういう小さな補給逃しが響いてきていたんじゃないだろうか。
走る前に、柴又100Kはコースが単調でつまらないという感想をネットでいくつか見てきたけど、そうは思わなかった。前後に一緒に走っているランナーがたくさんいる。ゼッケンにはそれぞれ思い思いのコメントが書いてある。沿道には声をかけてくれる人がいる。ときどき、数人だけどビブラムー! って声をかけてくれる人もいる。これはうれしい。それに、自分の体の調子を確かめながら走る。つまらんコースだな、などと思う暇はない。
40キロくらい、いったん河川敷から離れて、杉戸町の大規模なエイドを通過する。頭から水をかぶるシャワーを用意してくれていたりしたけど、それもスルー。水と、梅干しだけいただいて、立ち止まらずに走り抜ける。そろそろトイレに行っておきたいかな、と思ったけど、だったら50キロのレストステーションまで走り続けることにしよう。また砂利道を走り(痛い)、また河川敷から離れて、町なかを走る。応援の人たちがいっぱいいて、レストステーションに到着。まずはトイレに並ぶ。たくさんあるかと思ったら予想外にひとつしかない。トイレを済ませ、頭からシャワーをかけてもらい、キンキンに冷えた水を飲む。これが本当にんまい! スイカときゅうりとトマトをいただき、ドロップバッグを受け取り、実家から送ってもらっている梅干しを食べて、途中で消費したジェルやアミノ酸など中身を補充。ここまで携行してきたスマホの充電器をしまい、そのときに全体の平均ペースを確認すると、キロ5分18秒。70キロ走ったときと同じ。これならいけるか。後半用にシャツを着替える。そして、ここでさくらんぼのかぶり物をかぶる。あと50キロ、こんなことでもしなきゃ走ってらんねえ。そして後半スタート。レストステーションでの休憩は15分。これでもけっこう急いだんだけどなあ。時間が過ぎるのはあっという間だ。
後半すぐに給水の子や沿道のおばちゃんたちがかぶり物に声をかけてくれる。ああウケてる、よかった。が、足が重い。ウォッチのペースを確認するとキロ6分。あれ、遅い。前半はキロ5分でいけていたのに。ちなみに、GPSウォッチとスマホアプリだと少しペースが違う。両方持って走ると、ウォッチの方が距離が短く出る。つまりペースが速くなる。だから前半のキロ5分というのも、多少はずれているのかなと思っていたけど、コースのキロ表示とは100〜200メートルくらい違うままで正確だったし走ったあとのスマホでも101キロとそうあきらかな誤差はない。まあそれはそれとして、レストステーション前とあとではあきらかに足運びに違いが出てきている。前半より足が動かない。きつい。休みすぎて足が固まってしまったか、我慢していればそのうちまた動くようになるんじゃないだろうか、と言い聞かせながら地道に進んで行く。河川敷を戻っていると、向かってくるランナーとすれ違う。こんなかっこしてるのに誰も声をかけてくれない。みんなは必死に走っているのに俺だけこんなかっこしてばかなんじゃないだろうか、などと暗い、恥ずかしい気持ちになる。それでも遅くなったペースを我慢して、ばかみたいなかっこしてるのを我慢して走り続ける。
途中、給水所でかぶり物を脱いで水をかぶったりしながら走る。脱水、ハンガーノックだけは避けなきゃいけない。どの地点だったかは覚えていないけれど、給水を抜けたところで一緒になったランナーに声をかけられる。かぶり物きつくないですか。あれ、しかもビブラムじゃないですか、砂利道きつくないですか。いやあきついですね、ほんときついです。でもほかのシューズもう3年くらい履いてないからこれしかないんです。今の給水で飲みすぎて胃が痛くなってきました。などと会話する。気がまぎれる。そのランナーとも別れて、またひとり走る。やがて70キロ。時間を確認すると、13時52分。・・・あれ。非常に、非常にいやあな予感がする。70キロ超は未知の距離だということを考える余裕もなくなっていた。10時間まであと3時間。ウォッチのペースではキロ6分。このままだと、このままのペースだとサブテンぎりぎり、いや給水なんかのロスも含めると厳しいんじゃないか。おかしい、予定通り走ってきたはずなのに。レストステーションで休みすぎたか。いやそんなことはない。途中の給水でも立ち止まっていない。どうしてだ。どこで間違った。疑問や不安がぐるぐると頭の中をめぐる。いやもう考えている場合じゃない。走らなきゃならない。
ペースを教えてくれるウォッチ、いつかバッテリー切れるんじゃないか、いつ切れちゃうんだろ、と思っていたけど、なかなか切れなくて、けっこうやるなあNIKE+GPSウォッチ、と思いつつ、タイムを見ながら、ペースを見ながら、時間との戦いを続ける。
80キロあたり、大きめのエイドでバケツに入った水でかぶり水をしてくれている。かぶり物を脱いでかけてもらう。これがもう今までで一番の冷水。ものすごい冷えていて、ぎゃーと叫び声をあげてしまう。最高だー! そして水を飲んで、コップをゴミ箱に捨てようとしたら、捨てられている袋を見て、あれ、ここがスペシャルバッグ地点なのか。ふと横を見ると、自分のゼッケンナンバーからバッグを用意しておいてくれていた。ありがとうありがとう。入れておいた梅干しを食べて、アミノ酸を入れたドリンクを飲んで、ジェルを補充して、ようかんも入れていた。でもようかん、ちょっと胃に負担がきつそうで食べる気になれない。と思って、さっきかぶり水をかけてくれた人に、お礼にようかんあげますって手渡す。苦笑いされる。ほんの気持ちです。そして再出発。結局スペシャルバッグ、なにを入れておけばいいかスタートまで分からなかったけど、いまだに分からない。
ところで、70キロ以降だったと思うけど、途中で携行していたジェルを食べたら、なんか口の中がおかしい。しびれるというか、味覚がなくなっている気がする。なにか体に異変が起きているようだった。うーん、100キロってきつい。
ちらちらとタイムとペースを確認していて、85キロ過ぎ、ウォッチを見ると、ついにバッテリーが切れていた。ああ、ここまでだったか。バッテリーはだいたい8時間半かあ、よくもったなあ、今までありがとう。これからは自分のペースで、自分の感覚を頼りに進まなきゃいけない。10時間まで猶予はない。
それからはもうきつくてきつくて、いつになったら終わるんだ、ゴールはどこなんだと悪態をつきそうになりながら走る。気が付いたら60キロ部門の人たちも走っていて、抜きながら走りつづける。89キロ過ぎだったか、坂を登って、少しひらけたスペースがある、仮設じゃない公衆トイレがあるところ、応援の人たちがけっこういるところで、ひとりの男性が笑顔でなにか手渡してくれる。あ、氷だ。氷が2かけら。ひとつ口に含む。ああ、冷たい。あまりに冷たくて、あまりにおいしくて、涙が出そうになる。ありがとう、本当においしいです。
だんだん空が、風景がだいだい色に色づき始めてきた。夕方だ。今何時なんだろう。もう10時間過ぎちゃったかな、いやペースが落ちている気はしない。むしろ上がっているくらいのはずだ、まだ10時間じゃないはず。そして、スタートすぐに通った砂利道へ。最後の関門かあ、と思いながら足を踏み入れると、痛くない。あれ、どうしてだ。ああ、もう感覚が麻痺しているのか。ダメージを受けている証拠だろうけど、むしろ好都合だ。淡々と走って砂利道を抜けて坂を上がり、しばらくいくと、遠くに白い、白い屋根のテントが並んでいるのが見える。あれは、あれはスタート地点のテントだ。やった、やった、やった、ようやくゴールだ。ついにゴールだ。やっと終われる。やっと走り終われる、そう思った瞬間。
ゆうやーけこやけーのー・・・。17時を知らせる「ふるさと」のチャイムが響く。あ・・・5時か・・・。頭が真っ白になりながら、坂を降りて、ゴールへ。周りに人がいっぱいいた気がするけど、目に入らない。笑顔になれたかどうか思い出せない。とにかくゴールへ。ゴールに向かって、ピースしようって手が出て、ゴール。10時間3分。
いつも通りすぐには止まれずに、柵にぶつかりそうになりながら手をかけて止まる。メダルをかけてもらう。アミノゼリーをもらう。椅子に座ってチップをはずしてもらう。立てない。なんとかVFFを脱いで芝生に横になる。立てない。周りが仲間のランナーと話しているけど、そんな元気があることがうらやましいと思う。しばらくしてようやく動かなきゃと立ち上がる。月刊ランナーズの取材の人がビブラムについて聞いてきた。べつに普通のシューズとそんな変わらないですよみたいなことを答えた。預けていたバッグを受け取り、着替える。なにか食べようと思い、とん汁を食べる。ずっとずっと休んでいたい。けれどそういうわけにもいかない。帰ろう。ゴールを見たり出店をまわったりしたい気もするけど、疲れ果てて無理だあ。とにかく俺は100キロ走りきったんだ。運営、給水、エイド、応援、どれも素晴らしい大会です。俺の走りがふがいなかったです。

事前に70キロまでは走っていて、そのときはそれほどダメージも残らなかったので、プラス30キロくらいはいけるだろうと思っていたけれど、撃沈してしまった。なぜ後半ペースが落ちたのか、なぜぎりぎりだったのか。なにが敗因だったのか。給水でしっかり水分はとった。ドロップバッグとスペシャルバッグ、携行した塩タブレットで塩分も摂取していたはず。スマホアプリでログを見て、消費カロリーが5300キロカロリーというのを目にして、エネルギー不足じゃないかと思い始めている。当日は胃に食べ物が残るのが不安で、フルマラソンのときよりも少ない朝食。エイドでしっかり食べようと思っていたけど、取るをためらってスルー。携行したジェルと50キロのスイカときゅうり、トマトくらいしか口にしていないか。やっぱりエネルギーの枯渇だったんじゃないんだろうか。もしくは当たり前のことだけど練習不足ですね。
次を考える気にはなれない。また100キロ走るかといわれて、走りますとは言えない。というかお断りします。それくらい打ちのめされて、初の100キロはおしまい。お疲れさまでした。ありがとうございました。今シーズンは今度こそ終了です。さあ思い切りぐうたらするぞー。走る以外はいつもぐうたらだけど。

ちなみに帰りに電車を逆方向に乗ってしまって、さらに打ちのめされたってのは愛嬌。おしまい。