さいたま国際マラソン、42.195キロ。
ビブラマーとしての覚醒。
前日から雨。どうやらスタートまで残るらしい。夜中にじゃんじゃん降って朝には雨が上がっていることを願いながら、眠剤を飲んで寝る。3時半くらいにいったん起きたけど、寝直して5時40分アラームがなって起きる。風呂に熱いお湯を張って、しばらく浸かり、朝食。ホームページの情報を見ると、Aブロックの整列が8時50分から9時10分まで。スタートの30分も前じゃないか。トイレ行きたくなったらどうすんだ。こりゃ水分を摂らないでおくしかない。食事と一緒にオレンジジュースを飲んで、それだけ。余計な水分は摂らないことにする。うどん1玉、餅2個、4つ切りトースト2枚。6時40分のちょうどスタート3時間前に食べ終わる。そしてウェアを着て、忘れ物ないよな、家を出る。出てすぐに、あ、マスク忘れた。取りに帰る。いつも忘れ物をする。あとちょっと冷えるからネックウォーマーも着けていこう。
さいたま新都心駅に着いたのが8時前。さいたまスーパーアリーナに入り、すぐトイレに並ぶ。っておい、200レベルしか使えないのかよ。これじゃ時間かかるじゃないか。待つ、待つ、待つ。ようやく順番が来て、用を済ませて、場内に入り急いで着替え。ああもう整列の時間だ。貴重品を預けに表示のあるところに向かう。ってここはC、Dブロックの預け場所なのか。ぐるっと走って、おいここ俺が着替えたとこのすぐそばじゃないか。預けて、トイレに行って、あ、マスクしたままだ。しかもグラサン忘れた。急いで席に戻ってグラサンかけて、外に出る。外に出ると、あ、雨上がってる。雨降ってる間だけして上がったら捨てようと思ってた帽子を置きに急いで戻る。ようやくAブロックに整列。待っている間に雨が降ってきた。しまったやっぱり帽子かぶったままでよかったか。アミノ酸、クエン酸を入れたドリンクを列に並びながら飲む。待っている間に9時10分。日本代表選考会、チャレンジャー枠のスタート。そして列をスタート地点に詰める。
ところで、履いているのはVFF。あつぎマラソンを走ったあとに、さいたま国際はVFFでいこうと決めていた。おそらくシューズで走るのと変わらないか、より早く走れるという確信を持って。今までの走り込みがあれば、絶対にいける。雨に備えて、富士山マラソンでもらったポンチョをかぶって、VFFに雨が滲みるを守るためにビニール袋をその上に包んで待つ。
スタート地点に詰めてもまだあと30分もあるんだぜ。みんな座ろうぜ。と思うもみんな立ったまま待ってる。本気か。ええい、こんな待つだけで足を使いたくないんだ。思い切って座る。Aブロックの待っている間ひとり体育座りしてたの僕です。邪魔になってたらごめんなさい。座って見渡すと、周りが履いているのはやっぱりアディゼロアディゼロターサーターサー。みいんな同じようなのばっか。VFFなんか俺しかいねえ。今に見てろよ、負けねえかんな。などど誰も気にしていない対抗心を燃やす。前情報によるとだいぶ厳しいコースらしいけど、グロスサブスリー、これがひとまずの目標。スタート10分前になって立つ。足を包んでいたビニール袋を取ると、ありゃ、濡れてる。並ぶ前にすでに濡れておった。ちっ。行列で狭いながらもストレッチをして、いよいよスタート。
スタート地点までロスは20秒くらいだったかな。始めは混雑に停滞しないよう、かつ流れに巻き込まれないよう冷静に。ランナーの間を縫って走っていく。だいたい自分のペースで走れるようになって、ちらちらとウォッチを見ると、キロ4分から4分2、3秒くらい。よっしこのままで行くか。スタートには雨も上がり、曇りでちょうどいい。というか、ポンチョが暑い。スタートしてもう脱ぎたい。でもまた雨降ってくるかもしれない。ちょとだけ、5キロくらいまで着たままでいこう。と思ったものの、やっぱり暑い。体も温まってこのままいけそう。2キロ過ぎに脱ぐ。ドリンクのペットボトル、VFFを包んでいたビニール袋、ポンチョを持ったまま走る。ああ、捨てたい。ゴミ箱か持ってくれるスタッフいないかしら。いない。しばらく持って走って、4キロ過ぎ、目の前にゴミ箱が現れる。やっとあったあ、と声に出してゴミ箱に入れる。ようやく走りに集中できる。ちなみに、マラソン中の給水所で取った紙コップも、当たり前だけどゴミ箱に入れる。入れ逃したら当たり前だけど次まで持って走る。これがポリシー。4分前後を守って順調に走る。沿道の人たちの応援が本当にうれしい。途切れないで続いている。たくさんいて、なかなか応えられなくてごめんなさい。本当に力になっています。
スタートまで水分を抑えていたのと、気温が高くなりそうだということで、給水は確実に摂っていく。給水所で、前にランナーが走っていなければ2回取るように心がけて確実に。おかげでトイレに行きたくもならず、のどが渇くこともなく、とても順調に走れている。10キロでタイムを確認。43分。おっせえ、と呟いちゃったけど、計算し直したらそれほど遅くはなかったようだ。15キロ過ぎだったか、平均ペースを確かめようとしてウォッチのボタンを押したら、ぎゃあ間違えた、止めちゃった。急いで再開。そんなこともあったり、途中で代表選考ランナーとすれ違い、有料道路を走り、継ぎ目に足先が入って濡れたり、埼玉スタジアムを横目に抜け、ハーフに到達。1時間28分。持っていた補給食のジェル1本目を投入。足はまったく問題ない。このままのペースで行けそう。もしかして、むしろ終盤ペースアップできるかもしれない、くらい順調。
と思いながら進んでいると、25キロ過ぎたあたりだったか、右足裏に違和感。ぴりぴりする。どうした。なにか小石でも入ってしまったか。いやもしかしてVFFの裏が穴が開いたとか、それはないか。ただぴりぴりはするものの、故障して立ち止まってしまうほどじゃない、大丈夫。28キロ過ぎあたりで、沿道の方々が手を出しているのに気付いた。よっしゃあ大好きなハイタッチだ。声を上げてハイタッチをして走り抜ける。一気に力が湧いてくる。やっぱマラソンといえばこれだなあ。本当にうれしい。30キロで2時間6分。よしこのままでサブスリーは余裕の範囲内だ。補給食のジェル2本目を投入。カフェイン入り。先週からカフェイン抜きをしてきて、さあ力になるか。まだ足は順調に動いている。よし、このままいって35キロでペースを上げてみようか、と思う。35キロ、35キロはまだか、まだかー。ってなかなか35キロに到達しなかったけど、ようやく到着。よしここからが勝負だいくぞ、と気合を入れる。ここでカフェイン錠剤を投入。初めて試すことにしたトメルミン。あ、ミントが心地いい。って思ったらすぐに給水。あちゃーもう少しこのミントの爽快感を味わいたかったけど、と思いながら給水を摂る(あとからログ見たら35-36キロで少しペース落ちてた、気合入れたのになんでー?)。そしてさいたまの街中へ。周りはペースが落ちてるみたいだ。どんどん抜いていける。すごい、こんな順調なのこわいくらい。気付いたら38キロあたりの給水所に来て通り過ぎるところだった。うわ取り逃がしたか、と思ったら道路の反対側にもあった。こっちは人がいない。よっしゃと斜めに走ってコップを取る。こっち側に来るランナーあんまりいないらしくて声援が大きくて、俺だけのために声援してくれるみたいですごいうれしい。ありがとう。よっしゃ。まだまだ抜いていける。道路標示にさいたま新都心の文字。いよいよラストだ。すごい、まだ足が持っている。今の給水が最後だと思ったけど、40キロ地点にまだあった。今度こそ最後か。もう摂らなくてもいいかもと思ったけど、最後までなにがあるか分からない。積極的に給水しよう。そして、残り2キロ。よっしゃ、いっちょやったるか。意識してスピードを上げる。ラストスパート。電車との高架をくぐり、どんどん抜いていく。そしてラスト。最後の曲がり角、オールスポーツのカメラに向かってピースサインをして、曲がって、いくぜ、雄叫びを上げて、ダッシュ! って、あ、ゴールまで思ったよりちょっと長い。つりそう? いやいける、大丈夫、いける、おっりゃあああああ! そのまま、ゴール。2時間57分。
いつものことだけど、ラストでダッシュするから、ゴールして勢い余ってスタッフの方々の人混みに突っ込んでしまう。かろうじてぶつからなかったけど。ガードレールに手をついて止まって、その勢いでウォッチのFINISHボタンが押されちゃったみたい、ウォッチを見ると、一瞬だけ「ALL TIME BEST」って出てるのを見る。ぎゃーもっとゆっくりじっくり、思いに浸って見たかったああ。なんにしても自己ベストだ。おっしゃあああと雄叫びを上げたくなる。けど我慢。そして誘導に従って進む。ポカリを受け取り、お疲れさまでしたーの声にありがとうございますって返していく。みんな言ってくれて、うれしくていっぱい返したよ。ふと足元を見ると、VFFに血がにじんでる。ん、なんだ? まあいいか。そのままスーパーアリーナ施設内に入って、メダルをかけてもらって、フィニッシャータオルをかけてもらって、計測チップを外して、アリーナ場内へ。あれ、記録証はないんか。いやそんなことより、やばい、足がまだ動く。すごい元気。階段ももちろん余裕。貴重品受け取りへ向かって、あまりに元気で試しにちょっと走っちゃうくらい。うん、まだいける。そんな自分に驚く。着替えるときにVFFを脱いだら、ところどころ擦れたり、皮がむけたりしてる。途中から感じた右足裏の違和感も、皮がむけたものだった。これだからSEEYA LSは生地が固くていやなんだ、いやソール部分は関係ないけど。そのせいじゃないかもしれないけど。履くけど。去年大田原をVFFで走ったときはなんの異常もなかったんだから。
着替えも終わって、本当に終わり。あとは帰るだけ。スーパーアリーナから外に出て、ゴール地点の真上なのに気づいて見にいく。時計を見ると13時39分。うわ、ちょうど制限時間だ。みんな最後の力を振りしぼってゴールに向かって走っていく。時間が迫る。20秒、10秒・・・5、4、3、2、1、タイムアップ・・・。即座にスタッフがゴールをふさぐ。あ、本当に4時間なんだ・・・。最終関門を抜けたらゴールまで走らせてもらえるわけじゃないんだ・・・。たしかに、制限時間4時間なんだから当たり前なんだけど、あまりにあっけなくて、あまりに非情で、こみ上げてくるものがある。前に東京マラソンの35キロ手前の関門を見たけど、あれも非情だったけど、ここはゴールだぜ。最後まで、あとほんのちょっとだけ、最後あと2キロちょっとの40キロの関門を抜けてきたんだから、ゴールまで、ほんの目の前まで、すぐそこまで走らせてあげようよ、と思ったんだけど、思い直す。これが競技。これがマラソン。
まだいける。これ以上ないくらいの完璧なレースができた。スピード練習、ペース練習をしてこないで来たから、というか、巷でいわれるマラソン練習というものが分からない、LSDとかビルドアップっていうのは言葉からなんとなくは分かるけど(思い違いをしているかもしれないけど)、インターバル走とか、ポイント走とか? ウィンドスプリント? はあ? なにそれ? マラソン用語がさっぱり分からない、いつもただ自分の好きなように、気のおもむくままに、体の動くように走っているだけ。体に聞いて、これくらいまでいける、これだけ負荷を与えようって感じで走っているだけ、だからどのくらいのスピードが自分のフルマラソン限界ペースなのかが分かっていないから、逆にこれだけ余裕のあるレースができたのか。まだまだいけたかもしれないけど、自画自賛するほどで走りきれたことに満足。
そして、VFFでまったく問題なく走れたことに満足。擦れたけど、雨に濡れて皮が弱くなっていたからかもしれない。なんにせよVFFのソールによって足にダメージがきて、走りを、スピードを妨げることはない。むしろもっともっといける。もうこれからはVFFで走っていける。ちゃんとしたシューズならもっといけるよと言われても動じない。他のシューズのクッションには負けない。言い訳にはしない。
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